No.70 進歩性:構成要素の置換でも、置換前後の技術的性質が異なり、予測できない効果が得られる場合には、容易に想到できない。
判例No. 70 平成23年(行ケ)第10221号 審決取消請求事件
(STED走査型顕微鏡検査における照明用光源装置の発明に関する審決取消訴訟)
進歩性:構成要素の置換であっても、置換前後の要素には能動的か受動的かという技術的性質の相違があり、置換によって当業者が予測し得ない効果が得られる場合には、その置換は容易に想到できない。
以下は、上記判決に関する独自の見解です。
1.独自解釈による判決要旨
引用例2においてDyeLaserを中間素子に置換すると、本件発明と同様の構成となる。
しかし、DyeLaserは能動的にレーザ光を発振するレーザ光源であるのに対し、中間素子は受動的に波長を変換する素子である点で、両者の技術的性質は異なる。
更に、DyeLaserを中間素子に置き換えることにより、後述の「引用例から予測できない効果」が得られる。
そのため、当該置換は引用例から容易に想到できるものではなく、本件発明には進歩性が認められる。
2.本件発明と引用との対比
(本件発明と引用例1、2との共通点)
第1の光線を試料の第一合焦領域に照射することで第一合焦領域に蛍光を生じさせる。また、第2の光線を試料における第二合焦領域に照射し、第一合焦領域と第二合焦領域との重畳領域において、第1の光線によって励起された領域(この領域の分子)が第2の光線により誘導されて基底状態に戻されることで蛍光が生じなくなる。
(共通点による効果)
重畳領域において、第2の光線により誘導放射が生じない領域(第一合焦領域よりも狭い領域)においてのみ蛍光が生じる。その結果、蛍光観察における空間分解能が向上する。
(相違点)
第1及び第2の光線を生成するために使用する発振源(レーザ発振器に対応)の数は、本件発明では1つのみであるが、引用例2では(引用例1でも)複数である。
これについて、本件発明では、1つの発振源からの光線を2つの光線に分割し、一方の光線を第1の光線とし、他方の光線は中間素子を通過する過程で波長が変化して第2の光線になる。この中間素子は、新たに光を生成しないので、発振源に該当しない。」
(引用例から予測できない効果:相違点に係る本件発明の構成による効果)
「従来技術では通常2つの高価なレーザー発振器が必要であり,正確な調整が必要であったのを、1つの発振源で足りるようにするとともに,顕微鏡の照明装置の構成を単純,低価格で,調節が容易で安定的に動作するものとし,さらに発振源をパルスレーザーとするときには複数の発振間の同期化を省略できる。」
弁理士 野村俊博
